2015年5月8日(今から10年前です)ある静かな山道を歩いていた時のこと。
ふと足元に目をやると、このあたりによく咲いているニリンソウに似た白い花が、ひっそりと咲いていました。

「名前は知らないが、ちょっと写真に撮っておこう」
そう思い、そっとしゃがみ込み、手を触れぬように距離を取りながら撮影したのがこの一枚です。
後に図鑑で調べたところ「チチブシロガネソウ」ということがわかりました。
◆ チチブシロガネソウとは?
チチブシロガネソウ(秩父白銀草)は、キンポウゲ科の多年草で、春の終わりから初夏にかけて白い花を咲かせます。
名前にある「秩父」は、かつて多く見られた埼玉県秩父地方にちなみ、「白銀草」は花びら(実際には萼)が陽の光を受けて銀色に輝くことから名付けられました。
日本にしか生息しない固有種であり、近年では環境省のレッドリストで「絶滅危惧II類(VU)」に指定されています。
◆ なぜ絶滅の危機に?
チチブシロガネソウが減っている原因は、さまざまな要素が絡み合っています。
- 森林の開発や土地改良による自生地の消失
- 登山道の整備や人の踏み込みによる物理的なダメージ
- 気候変動による気温の上昇や水環境の変化
- さらには、園芸目的の乱獲なども原因の一つです。
人間の生活が便利になる一方で、こうした小さな植物たちの居場所が少しずつ奪われているのが現実です。
◆ 見つけたらどうすればいい?
チチブシロガネソウを見かけても、決して採取せず、そっと見守ることが大切です。
写真に収めるときも、踏み荒らしにならないよう、足元に十分注意してください。
また、その写真や出会いのエピソードをSNSやブログで共有することも立派な保全活動の一つです。
◆ 自然と共に生きる宿として
私は、こうした地域に根ざした自然や文化を未来へつなぐことも、大切な使命の一つだと考えています。
このサイトをご覧いただく皆様に、自然の美しさや尊さをお伝えしながら、「守るべきものがここにある」というメッセージを発信していきたいと思います。
◆ 最後に
たった一輪の花との出会いが、自然へのまなざしを変えることがあります。
そしてその花は、何百年もかけてこの地に根付いた命のかけらです。
ぜひ、皆さまも山や自然を訪れる際には、足元の小さな命に目を向けてみてください。
それが未来への「保護活動」の第一歩になります。
ちなみに、この花の画像を別のブログでアップしていたところ、県の方から「自生していた場所は公表しないでください」とのコメントがありました。
よってこの花が咲いている場所は私しか知りません。
しかし、絶滅危惧種から逃れ群生をするようになり、多くの人々の目に入るようになることを期待してやみません。