
松本市にある「ふたつの国宝」とは
長野県松本市には、実は国宝に指定されている文化財が二つ存在します。ひとつは、全国的にも知名度が高く、国内外から観光客が訪れる「松本城」。そしてもうひとつが、明治初期の擬洋風建築として知られる「旧開智学校」です。
松本城の陰に隠れがちですが、旧開智学校は近代教育の黎明期を象徴する貴重な建築遺産であり、日本の近代化の歩みを今に伝える文化的価値の高い建物です。
3年半にわたる耐震改修工事が完了、再オープンへ
旧開智学校は、1876年(明治9年)に建てられ、すでに築150年近い歴史を誇ります。そのため老朽化や地震への耐性が課題となっていましたが、松本市は2019年から3年半をかけて耐震補強工事を実施。歴史的価値を損なうことなく、現代の耐震基準に適合させる高度な修復が行われました。
そして2024年11月9日(土)、ついにリニューアルオープンをしました。この取り組みは、単なる保存を超えた、地域と文化の未来を守るための重要な施策といえるでしょう。
歴史的建造物の耐震化とSDGs目標11の関係
この耐震補強事業は、SDGs(持続可能な開発目標)目標11「住み続けられるまちづくりを」と深く関わっています。
SDGs目標11では、「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住を実現する」ことが掲げられています。日本のような地震大国において、歴史的建築物の防災対応はまさにこの目標の核心にある課題です。
旧開智学校のような文化財を未来に受け継ぐためには、単なる「保存」ではなく、「活かしながら守る」という視点が必要です。今回の松本市の取り組みは、文化財の持続可能な活用と地域防災の統合的アプローチの好例といえるでしょう。
「知る人ぞ知る国宝」を次世代へ引き継ぐために
旧開智学校は、松本城と比べると観光資源としての知名度はまだ低いかもしれません。しかし、その歴史的意義と建築的価値は決して劣るものではありません。
教育の発祥を象徴する建物であり、和と洋が融合した擬洋風建築は、明治という激動の時代を象徴する希少な存在です。**次世代に引き継ぐべき「もうひとつの国宝」**として、再評価されるべきタイミングに来ているのではないでしょうか。
松本市の中心部からもアクセスが良く、松本城との周遊観光ルートにも適しています。学校建築や明治期の歴史、教育の変遷に興味がある方にとっては必見のスポットです。
松本市が発信する文化財保全の未来型モデル
旧開智学校の耐震補強事業は、全国の自治体にとっても学ぶべきモデルとなるでしょう。以下の点において、特に注目に値します:
- 歴史的景観を損なわない高度な修復技術の活用
- 防災と文化の融合による地域の持続性向上
- SDGsを基盤とした自治体行政の推進
- 周辺観光資源との連携による経済効果の波及
つまりこれは、単なる建物の保存ではなく、「文化を活かした地域づくり」「未来を見据えたまちづくり」としての実践例なのです。
文化財を守ることは「地域の心を守ること」
文化財とは、単に古い建物を指すのではありません。それはその地域に生きてきた人々の記憶や、精神的な支柱でもあります。旧開智学校が再び市民や観光客を迎えることで、松本の歴史や文化に触れる機会が増え、地域への誇りや愛着が高まっていくことが期待されます。
そしてこの動きが、他の地域にも波及することで、日本全体の文化財保全とSDGsの推進にもつながっていくでしょう。
まとめ|松本のもうひとつの宝「旧開智学校」を訪れてみませんか
松本市の誇るもうひとつの国宝、旧開智学校。3年半の耐震工事を経て、再びその扉が開かれました。
それは、単なる再オープンではなく、**文化と防災、そして持続可能性が融合した「新しいスタート」**です。
ぜひ松本城とあわせて、「知る人ぞ知る名建築」旧開智学校を訪れてみてください。そこには、過去と未来をつなぐ物語が待っています。