次世代に残したい風景

【次世代に残したい風景】塩尻市・平出の泉──命をつなぐ、静かな水の記憶

塩尻市・平出の泉──命をつなぐ、静かな水の記憶

長野県塩尻市に「平出の泉(ひらいでのいずみ)」という、美しい湧水があります。
年間を通して水温は約10℃。冬でも凍ることなく、静かに水を湧き出し続ける泉です。

その水は、透明度が高く、晴れた日にはエメラルドグリーンの水面が空や木々を映し出します。
ただ見ているだけで、呼吸が深くなる。そんな場所です。


古代から人を惹きつけてきた理由

この泉のすぐ近くには、縄文時代から平安時代まで続いた大集落「平出遺跡」があります。
人々がこの地に住み、暮らし、命をつないできたのは、他でもない“水”があったから。

水は、命の原点。
飲み水として、農業用水として、そして祈りの場として──
この泉は、昔から人と共にありました。


地域の手で守られている泉

現代になっても、この泉は決して“放っておかれている”わけではありません。
地域の方々が日々、草刈りや清掃などを行い、大切に守り続けています。

特に毎年12月には、水を一度抜いて、底に溜まった藻や落ち葉を取り除く作業が行われます。
そのときに見える「湧き出す瞬間」は、まるで地球の息吹を感じるような、神聖な光景です。


水を未来へ手渡すということ

平出の泉は、ただの観光スポットではありません。
それは、人と自然が共に生きてきた“証”であり、未来に手渡すべき文化遺産でもあります。

華やかさはないけれど、静かで、確かで、やさしい風景。
こうした場所があることを、子どもたちにも知ってほしい。
そして、「水がある」ことが、どれほどありがたいことなのかを、もう一度私たち大人が思い出すきっかけにもなるはずです。

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