
四季折々の自然が織りなす美しさが、私たちの心を癒してくれる日本の風景。その中でも、長野県北安曇郡池田町・大峰高原にたたずむ「七色大カエデ」は、まさに“自然と生きる”ということの尊さを体現している存在です。
今回は、春夏秋冬の色彩をまとう一本の木「七色大カエデ」について、そしてその背景にある自然との共生の大切さについて、お話ししたいと思います。
一本のカエデが見せる「七つの色」
「七色大カエデ」という名は決して誇張ではありません。大峰高原のこの一本のカエデは、季節の移ろいとともにその姿を何度も変えていきます。
- 春:新芽がやさしい緑色に輝き、山の目覚めを告げます
- 夏:深く力強い緑が広がり、青空とのコントラストが美しい
- 秋:一枚の木に、黄、橙、赤、紅、紫…と、まさに“七色”の紅葉が広がる奇跡の瞬間
- 冬:すべての葉を落とし、白銀の雪をまとった静寂の中に立つ姿は、まるで時間が止まったような荘厳さ
このカエデの美しさは、単なる観光名所という枠を超え、「自然の循環」と「生命の尊厳」を感じさせてくれます。
2006年、奇跡をとらえた一枚の写真
今回ご紹介する写真は、2006年10月31日に撮影されたものです。
この日は、秋の紅葉がちょうどピークを迎えており、「七色大カエデ」がその名にふさわしい多彩な色を一度に見せてくれた、まさに奇跡のような瞬間でした。
しかし、この写真に写る姿は、もう見ることができません。冬の雪の重みで枝の一部が折れてしまい、現在では当時の樹形を保っていないのです。
だからこそ、この写真は特別な意味を持ちます。「風景は永遠ではない」という現実を、私たちに静かに教えてくれています。
美しい風景を未来に残すためにできること
「七色大カエデ」を訪れた人の多くが、静かにその前に立ち、しばらく言葉を失います。自然の持つ力、美しさ、儚さ。全てがそこにあるからです。
この風景を未来へ残すためには、私たち一人ひとりが自然とどう向き合うかを見つめ直すことが必要です。
1. サステナブルな観光を意識する
自然豊かな観光地を訪れる際には、ゴミの持ち帰り、植物の踏み荒らしの防止、地元の交通ルールやマナーの遵守など、「そっと見守る姿勢」が求められます。
2. 地元の保全活動への参加・支援
池田町では、地域住民や企業ボランティアによる環境保全活動や清掃活動も行われています。観光を通じて、そのような活動に理解や協力を示すことも、風景を守る一歩です。
3. SNSでの発信と共有
「この風景を未来へ残したい」という想いを、写真や言葉で伝えることも、現代ならではのアクションです。発信によって共感の輪が広がれば、保護活動への関心も高まります。
「今ある姿」が尊いということ
自然は、常に少しずつ変化しています。気候変動や人の営みによって、そのスピードは以前より速くなっているかもしれません。
だからこそ、「今ある姿」そのものが、かけがえのない奇跡なのです。
七色大カエデのような風景を「ただきれいな景色」として眺めるのではなく、**「どうしたらこの風景を守れるか」**を考えるきっかけとしてほしいと思います。
おわりに
一本の木が教えてくれること。それは、「命は巡る」ということ。そして、「守る努力がなければ、やがて失われる」という現実です。
大峰高原の七色大カエデは、私たちに問いかけます。
「あなたは、この風景を未来に残したいですか?」
その問いに対して、私たちができる小さな一歩から始めていきましょう。