次世代に残したい風景

ウワミズザクラ──里山に咲く春の命と文化を未来へ

古代の木が教えてくれる、持続可能な自然との共生

2025年4月29日、私が里山で見つけたウワミズザクラ(上溝桜)は、日本の自然と文化に深く根ざした樹木です。​その美しさと生態系への貢献、そして保全の重要性について、サステナNAVI読者の皆さまにご紹介いたします。​ダンカイジン+9アメーバブログ(アメブロ)+9PictureThis+9


ウワミズザクラとは?—特徴と魅力

ウワミズザクラ(学名:Padus grayana)は、バラ科の落葉高木で、北海道から九州までの山地や沢沿いに自生しています。​樹高は15〜20メートルに達し、春には白い小花が穂状に集まり、まるでブラシのような花序を形成します。​この花は4月から5月にかけて咲き、葉が展開した後に開花するのが特徴です。 ​

果実は夏から秋にかけて赤から黒へと熟し、甘みがあり、果実酒や塩漬け(杏仁香)として利用されます。​また、クマリンという成分を含み、桜餅のような香りがすることでも知られています。


文化とのつながり—古代からの利用と名称の由来

ウワミズザクラは、古代の占い(卜占)で鹿の肩甲骨に溝を彫り、樹皮を焼いて吉凶を占ったことから「上溝桜」と名付けられました。​また、『古事記』にも登場する「ハハカ(波波迦)」は、この木を指すとされています。

地域によっては、蕾や未熟果を塩漬けにした「杏仁香(アンニンゴ)」が食用として親しまれ、新潟県などで特産品として販売されています。 ​


生態系への貢献—動物たちとの関係

ウワミズザクラの果実は、ヒヨドリやムクドリ、キジバトなど多くの野鳥にとって重要な食料源です。​また、ツキノワグマもこの果実を好み、果実を食べた動物たちが種子を遠くへ運ぶことで、ウワミズザクラの分布が広がります。 ​

このように、ウワミズザクラは生態系の中で重要な役割を果たしており、動植物の多様性を支える存在です。​


保全の現状と課題—エゾノウワミズザクラの例

ウワミズザクラ自体は広範囲に分布していますが、近縁種のエゾノウワミズザクラは、北海道と青森県に限定的に分布し、絶滅が危惧されています。​河川の氾濫や護岸工事、クローン繁殖による遺伝的多様性の低下などが主な要因とされています。 ​

このような事例から、ウワミズザクラも将来的な環境変化や人為的な影響により、生育地の減少や遺伝的多様性の喪失といったリスクに直面する可能性があります。


サステナブルな取り組み—地域でできる保全活動

ウワミズザクラの保全には、地域住民や自治体、企業が連携して取り組むことが重要です。​具体的には、以下のような活動が考えられます。​

  • 生育地の保全:​里山や沢沿いの自然環境を守り、開発や伐採を抑制する。​
  • 植樹活動:​地域の学校や団体と協力して、ウワミズザクラの苗木を植える。​
  • 環境教育:​ウワミズザクラの生態や文化的価値について学ぶ機会を提供する。​
  • 地域資源としての活用:​果実を利用した特産品の開発や観光資源としての活用を図る。​

これらの取り組みを通じて、ウワミズザクラの保全と地域の活性化を両立させることが可能です。​


結びに—ウワミズザクラとともに歩む未来

私が里山で出会ったウワミズザクラは、日本の自然と文化の豊かさを象徴する存在です。​その美しさや生態系への貢献、そして人々との深いつながりを再認識し、未来へと受け継いでいくことが、私たちの責務と言えるでしょう。​

ウワミズザクラを守り育てることは、持続可能な社会の実現に向けた一歩です。​地域の自然と文化を大切にしながら、次世代へとつなげていきましょう。​


この記事は、サステナNAVIの読者の皆さまに、ウワミズザクラの魅力と保全の重要性をお伝えすることを目的としています。​今後も、地域の自然資源を活用した持続可能な取り組みを紹介してまいります。

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