
SDGs(持続可能な開発目標)という言葉が日本に広く浸透してから、すでに約10年が経過しました。
2015年に国連で採択されたこの国際目標は、2030年までに達成すべき“持続可能な未来”を描いた、世界共通の道しるべです。
しかし、2025年現在の今、「あまり聞かなくなった」「もうブームは過ぎたのでは?」と感じている方もいるかもしれません。
実際、街中やメディアで以前ほど目立たなくなった印象はあるかもしれません。
では、SDGsの普及は本当に停滞しているのでしょうか?
その実態と、これからの方向性を紐解いてみましょう。
✅ 表面的なキャンペーンは減少。しかし“内在化”が進む
2018年〜2020年頃は「SDGsバッジ」を胸につけた企業経営者が注目され、テレビや雑誌でも連日のように「SDGs」特集が組まれていました。
いわば“SDGs元年”と呼ばれるブーム期でした。
しかし2025年現在、そのような派手なキャンペーンやアピールは減少傾向にあります。
これは決してSDGsへの関心が薄れたのではなく、むしろSDGsの考え方が企業や行政、教育現場に“当たり前の価値観”として浸透した結果ともいえます。
🌱 かつての「アピール」から、「自然に取り入れる」段階へ。
表に出てくることが少なくなった今こそ、本質的な取り組みが求められる時代に入っているのです。
✅ 企業は“ESG”と“非財務情報の開示”が主戦場に
企業におけるSDGsの取組みは、現在「目標の掲示」から「行動と説明責任」へと大きくシフトしています。
特に注目すべきは、非財務情報の開示義務の拡大です。
これにより、多くの企業が以下のような施策に本格的に取り組み始めています。
📌 企業の主なESG・サステナビリティ対応
- TCFD対応(気候関連財務情報開示)
気候変動が自社に与える影響を、財務データとして可視化 - GRIスタンダード準拠のサステナビリティ報告書の発行
- ISO14001(環境マネジメント)やSDGs認証制度の取得
- 人的資本の開示、ダイバーシティ推進、ジェンダー平等の実践
これにより、「SDGsは企業の社会貢献活動」という段階から、
「SDGsは企業価値そのものを左右するファクター」へと変わってきています。
✅ 教育現場・自治体では今も積極展開中
一方で、小中学校・高校・大学など教育現場では、**SDGsは今も“現役のテーマ”**として深く取り入れられています。
📘 教育現場でのSDGsの取り組み
- 学習指導要領にSDGsの考え方が組み込まれ、「総合的な学習の時間」や道徳の授業で活用
- 地域課題の解決を考える探求学習の中心テーマに
- 学生による地域活性プロジェクトやゼミ研究の中核にも
🏞 自治体での主な取組み(例:長野県)
- 「信州SDGsプロジェクト」として、企業向け認証制度や環境教育を展開
- 「地方創生×SDGs」の視点で、地域文化・伝統産業・観光資源を保護しながらの振興施策
- 市民活動団体やNPOと連携し、ボトムアップ型の課題解決を支援
こうした動きは、SDGsが一過性のスローガンではなく、地域に根ざした“教育・共創のツール”であることを示しています。
✅ 2030年まであと5年。今後は“静かな本気”が問われる
2025年、SDGsの最終目標年である2030年まで、残すところあと5年となりました。
現在、国際社会は「中間総括」と「取り組みの加速」のフェーズに入っています。
しかし同時に、以下のような課題も顕在化しています。
❗ 課題と警鐘
- SDGsの達成進捗は国や地域で大きな格差がある
- 「SDGsウォッシュ(見せかけの取り組み)」が批判されるように
- 企業の一部では“見せるためだけの活動”になっている
だからこそ、これからのキーワードは 「静かに、でも本気で」。
見せかけの取り組みではなく、地に足のついた実践と透明な報告、そして地域社会との協働がより一層求められる時代へと移行しているのです。
✅ 地域旅館とSDGsの親和性|小さな実践が未来を変える
地域旅館を経営されている方々が果たすSDGsの役割について触れておきたいと思います。
実は旅館業は、SDGsと非常に親和性が高い業種のひとつです。
🏡 地域旅館におけるSDGs実践の例
- 地産地消の推進・地域食文化の継承(目標2・12)
- 外国人や高齢者も泊まりやすいバリアフリー対応(目標10)
- 再生可能エネルギーの導入やEV充電設備の設置(目標7・13)
- 地元雇用の創出と働きがいのある職場環境の整備(目標8)
こうした取り組みは、テレビに出るような大きな話題ではないかもしれません。
しかし、全国各地の旅館・宿泊業者の“1つ1つの実践”が、日本のSDGs達成に直結していることは間違いありません。
✍ まとめ|今こそ、“サステナビリティ経営”を自分ごとに
SDGsという言葉は、一時期の「流行」ではなく、これからの時代を生きるための“新しい常識”として定着しつつあります。
表面的なアピールは不要。
むしろ、地域の一員として、地域の未来を思い描くことそのものが、SDGsの実践なのです。
サステナNaviでは、こうした“等身大のサステナビリティ”に光を当て、持続可能な地域社会と観光のあり方をこれからも伝えてまいります。